地盤材料には,砂,粘土,岩などが挙げられ,外力作用に対してそれぞれ材料特有の力学挙動を示します.地盤上や地盤中により安定性の高い構造物を施工するためには,その施工過程でどのような現象が生じ得るかを予測し,変状が生じる場合はどのような対策が必要かを検討する必要があります.そこで本研究室では,三軸圧縮試験などの室内要素試験をはじめ,模型実験,現場計測などの実験的なアプローチに加えて,有限要素法(DEM)を用いた数値シミュレーションにより,地盤材料の基礎的な力学特性の解明を進めています.
一方,土は,大きさも形もバラバラな小さな土粒子の集合体です.土粒子同士の隙間には水や空気が存在するため,土は固相(土粒子)・液相(水)・気相(空気)から成る多相系混合材料と見なせます.強度,剛性,透水性,締固め特性,圧密特性といった土全体のマクロな特性は,構成要素である三相のミクロスケールのふるまいに支配されます.本研究室では,X線マイクロCT装置を地盤材料試験に適用した土内部の可視化のほか,個別要素法(DEM)を用いた数値シミュレーションにより,マクロな力学現象をミクロな視点から解釈する研究をしています.
士の間隙に水が部分的に飽和した「不飽和土」の場合,水は表面張力と土粒子の親水性によりメニスカス形状を呈し,土粒子接触点に液架橋として,土粒子間隙にバルク水としてそれぞれ存在します.これらの間隙水にはサクションが作用し,土粒子間結合力や土粒子骨格の有効応力を高めるため,間隙水の数や分布が不飽和土全体の力学挙動に寄与すると考えられます.本研究では,土の排水・吸水やせん断時に,間隙水の存在形態や分布がどのように変化するかをX線マイクロCTにより調べ,それがマクロな力学特性にどのように影響しているか検討しています.
--------------------------------------代表的な論文-----------------------------------------
-Kido, R. and Higo, Y.: Microscopic characteristics of partially saturated
dense sand and their link to macroscopic responses under triaxial compression
conditions, Acta Geotechnica, Vol.15, pp.3055-3073, 2020. https://doi.org/10.1007/s11440-020-01049-w
-Kido, R., Higo, Y., Takamura, F., Morishita, R., Khaddour, G. and Salager,
S.: Morphological transitions for pore water and pore air during drying
and wetting processes in partially saturated sand, Acta Geotechnica, Vol.15,
pp.1745-1761, 2020. https://doi.org/10.1007/s11440-020-00939-3
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材料の破壊評価は、岩盤掘削、地質炭素貯留、地熱システムの運用、水圧破砕などの課題において不可欠です。私たちは、破壊と応力波、流体-固体相互作用、熱伝導の複雑な相互作用を考慮したマルチフィジックス計算手法を開発し、材料の破壊に関連する物理現象をシミュレーションして研究しています。また、高性能な並列計算技術をシミュレーションに適用し、コンピュータ支援エンジニアリング用のソフトウェアを開発しています。このトピックや研究機会についての詳細は、Fan ZHU准教授にお問い合わせください。
私たちは、非局所粒子法のPeridynamics法に基づく新しいアプローチを開発し、固体内の水圧破砕をシミュレーションしています。このアプローチは、Peridynamics理論のSemi-LagrangianおよびTotal-Lagrangian形式の結合を特徴とし、流体と固体の両方を明示的にシミュレーションします。また、流体のリークオフや既存の亀裂を考慮した多孔質媒体内の水圧破砕のモデル化にも拡張されています。この研究は、多様な条件下での地盤材料の破壊を研究・予測するための強力な方法を提供することを目指しています。
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流体駆動破壊のシミュレーション(左: 流体注入による水圧破砕; 右:破壊中の固体における主応力)。 |
流体注入による多孔質媒体内破壊のPeridynamicsシミュレーション(上部: リークオフが小さい場合; 下部: リークオフが大きい場合)。流体は上部から注入されます。
極端な圧力および爆薬と岩石間の複雑な相互作用により、爆発による岩盤破壊のモデル化は長らく課題となってきました。私たちは、Non-Ordinary state-based Peridynamics理論を活用し、爆発荷重下での岩盤破壊をシミュレーションするための新しいアプローチを開発しました。このアプローチは、固体の圧力依存性、ひずみ速度効果、および粘塑性を考慮することを可能にします。また、爆発プロセスはJones-Wilkins-Lee状態方程式とSemi-Lagragian Peridynamics理論を組み合わせてシミュレーションされます。詳細は以下の論文をご参照ください。
Peridynamics理論による衝撃はの伝播(上部)および岩盤の破壊(下部)のシミュレーション。
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